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アンカー施工の本質

2020/10/08|blog

なぜ通常のアンカー施工では、アンカー本体をコンクリート躯体の奥に設置するのか?

特に、孔底で反力を受ける構造のアンカーの中で、本体打込み式アンカー、内部コーン打込み式アンカーは、現場施工する数の90%以上を奥に入れているように感じる。

これには当然理由がある。

1.短期的に使用するアンカーの材質が鉄であることから本体が錆びる

2.使用済みのアンカーは、補修材で孔をふさぐ

3.施工時、「アンカー本体が飛び出た状態」を防止する

1,2は、アンカー本体の材質は鉄である事が多く、経年劣化で本体が錆びる。

3は、アンカーの施工不良を防止する為である。

この3つの理由から、アンカーを奥に設置する理由が納得できる。

しかし、なぜアンカーを奥に入れない方がよいと考えるのか?

それは、施工上アンカーを奥に入れない方が安全に使用する事ができる!からである。

 

アンカーの強度計算では、コンクリート躯体の深部へ設置する事で、アンカー本体の強度が上がると考えられている。

その理由は、設計でアンカーの強度計算をする際、有効水平投影面積を使用し、コーン状破壊面積を計算するからである。そして、アンカーを奥に挿入して引張試験を実施すれば、現場試験でも強度は上がる傾向にあるのは間違いない。

しかし、私は現場で施工する際のアンカーの位置を、コンクリート躯体より奥へ入れる事をNGとしている

理由は

① メーカーが推奨する施工ではない

② 打撃量が不足する

③ 施工完了がさらに不明瞭になる

④ 取付物のねじの嵌合量が不足する

⑤ 取付物のねじ長がバラつく

 

コンクリートの孔底で反力を受けるアンカーは特に、穿孔深さが特に重要になっており、ノギスで測定する事を推奨しているほどだ。ちなみに、それ以外の施工を標準外施工としている場合が多い。

 

「メーカー」と「現場」でなぜこのような違いがでるのか?

という事を考える。

 

「メーカー」と「現場」での考え方の違い

メーカーの考え方も色々あると思うが、同じメーカーの立場で代弁するならば、「とにかく安全に使用してほしい」という事の一点である。

アンカー1本の金額はとても安いが、そのアンカーに求められる責任は大きいからである。

アンカーに関する事故が発生した場合、死亡災害に発展するなど、被害が甚大になるからである。しかし、そのアンカーの値段は1本数十円ととにかく安い。

 

アンカーは一度設置してしまえば、問題が発生するまで、またはその構造物を取り壊すまで、または、アンカーの役割を終えるまで、ずっと放置されるからである。

 

これはこれで大きな問題なのだが、この理由に施工上の不具合が加わるのをどうしても防止したいのだ。

 

では、施工者側の立場はどうだろうか?

改修工事で足場を設置したケースを例に例えると、足場解体後、使用済みアンカーはコンクリート躯体面に残存する。この事が大きな問題となるのだ。

 

環境にもよるが、数年で材質が鉄であるアンカー本体が錆び、コンクリートのクラックや、錆びダレが発生するなど問題が発生する。

それを防止する為に、アンカーを設置した孔へ、補修材を充填させて、補修するのが一般的な施工なのだが、この補修材の厚みを確保するのが目的で、どうしてもアンカー本体をコンクリート表面より少しでも奥へ設置する必要がある。

コーキングの厚みが確保できないと、劣化しやすくなり、孔内へ水が浸入する事が懸念される。

※この他にも設置したアンカー本体が、コンクリート表面から飛び出てしまう「でべそ」な施工になるのを防止する目的もある。

 

「メーカー」と「現場」の立場の違いから、施工方法が変わってしまうのだが、そもそも使用済みアンカーを撤去する事ができれば、アンカーを設置する際、メーカーが推奨する本来の施工を現場で実施する事ができ、安全にアンカーを使用する事ができる。

 

アンカー設置のために穿孔した孔は、クラックと同じ扱いとなり、「現状復旧」が求められる

 

また、アンカー本体を撤去すれば、孔を確実に補修でき、改修工事等の品質を向上させる事ができる。

 

今回の問題である、アンカーを使用するうえで、「安全に使用したい」と思う気持ちは、発注者も元方事業者も、施工業者も皆同じでる。そして、工事の品質をアップさせる事は、工事者関係者にとって、とてもプラスな発想である。

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