アンカーの点検、なぜしない?
2020/10/03|blog
アンカーの点検をなぜしないのか?
一度設置してしまえば、その構造物を取り壊すまで、アンカーの役目が終えるまで、事故が発生するまで、ずっと放置するのが一般的なアンカーである。
しかし、想像してほしい。
1本50円のアンカーに500kgの荷重が常にかかり、この状態が何十年と続くのである。
はっきりいうが、この状態が安全である保障は全くなく、いつどこで大きな事故に発展する可能性を秘めているのである。
「笹子トンネル天井板崩落事故」が発生して早くも9年が経過した。
この事故がきっかけとなり、橋梁やトンネルの点検が義務づけられ、現在多くの「安全の確認作業」が進められているが、一部の構造物に限り進められているだけである。
では、橋梁・トンネルで進められているアンカー点検業務はどんなものか?
私は、昨年この業務に携わり実際に点検作業に従事したが、主に確認したのは、コンクリートのクラック・剥離の確認と金具の取付け状態を打音検査と目視で確認した。
コンクリートクラックは、打音検査する事で、コンクリート表面の剥離を確認する。正常な状態であれば「カーン、カーン」とハンマーで打撃を加えた時に、高い音が発せられるが、剥離している場所は「ボーン、ボーン」と音がこもったように感じる。また、手ごたえも正常な状態に比べ反発が少なくすぐわかる。
しかし、取付け金具に関しては、打音検査ではイマイチわからないので、ボルトのゆるみないか、アンカーが抜けてないかを目視で確認したが、実際は、アンカーの強度が担保されているかどうかの確認は全くしていなかった。
笹子トンネル天井板崩落事故は、アンカーの不具合から始まった事故である。
※樹脂系のアンカーを「永久アンカー」と呼ばれていたこともあるが、その永久アンカーが脱落し、事故になった。
あの事故から9年経った今でも、現場ですべての点検業務が的確に進められているとは言えないのではないだろうか。これは、設置したアンカーの強度を確認する方法が不明確だからである。
破壊・非破壊であっても、一度設置してしまったアンカーの引張試験を現場で実施するのはとても困難である。
〔困難であると考える理由〕
〇アンカーの強度を確認する方法が確立されていない
〇すでに部材が付いている為、取外しが困難である
〇全数検査が困難
トンネルや橋梁などの構造物は、現在点検やリニューアル工事が進められており、取壊して新しく作り変える時代から、改修して長く使用する時代へシフトしている。
アンカーもこの新しい時代の考え方に沿って、点検で安全を確認する必要がある。
トルク系のアンカーであれば、設置状態をトルクのゆるみで確認する事ができる。
※原理は、ボルトのゆるみを確認する為に、トルク検査をするのと同じである。
アンカーは設置したら最後ではなく、「使用中」の状態であれば、定期的に点検する必要があるのは、みなさんお分かりいただけたと思う。
もしかしたらアンカーバードは、点検できる唯一のアンカーかもしれませんね。
長く使用するからこそ、メンテナンスできる必要性が求められていると思っています。